長年、気に入って使っていた器が、壊れてしまったという経験はどこのご家庭でもあると思います。
当店でもプロが扱い、プロが洗いますがやはり壊れてしまう器が出ます。
 私がまだ中学生の頃に大将に連れられ、とある料亭に行った時に、金繕いされたお皿が前菜で出され「なにこれ?」と質問したのを今でも覚えています。
 昔から、貧乏性なのでしょうか、物を直して使うのが大好きで、決して趣味にしているのではないのですが半分は必要に駆られて、しかしまた半分は楽しくてやっています。
 よくお客様に「やってみたいけど、どうやって直すの?」とのご質問をよく頂きます。言葉でお伝えするとかなり長くなるので、こちらで紹介させていただきます。
 
使用道具
・ 人工漆(うるし)
 
・ 漆用薄め液
 本漆は慣れた方でないと扱いが難しく、かぶれを起こす危険があるので最初は人口漆をおすすめします。黒、赤、透明、など、いろいろな種類がありますが使い込んで金が落ちた時を想定し、器に合わせて使い分けても面白いと思います。どちらも釣竿や浮きの修理用として釣具屋さんで販売されています。
 
 
 
・ 耐水サンドペーパー #800〜#1000
 紙やすりの水を付けながら使うものです。ホームセンターなどの専門店などにあります。

 
・ 水中ボンド
 本来、タイルの接着や目地埋めに使われる物で「充てん接着剤」とも言います。粘土状のA剤とB剤を混ぜ合わせて硬化させる物で、一般の接着剤やボンドとはまったくイメージの違う物です。これもホームセンターや専門店などにあります。
 
・ 金粉
 ゴールドの相場によって上下が有りますが、純金の粉は1グラム(見た目、びっくりするくらい少量ですよ)何千円もします。
せっかく塗った金も使っているうちにすり落ちて、漆の色が出て来ます。これも金繕いされた器の「味」だと思いますが、再度塗り直す事を考えて比較的手頃な泥金(でいきん)をお勧めします。1グラム数百円位で、試してみてもまったく問題なく金色に輝いています。

 ちなみに私は、当店のお客様で骨董業を営むM様にかなり古い箱に入った「オランダ製 純金、銀泥」を戴き、生意気にも金銀使いたい放題させて頂いております。M様には本当に感謝しております。
純金、泥金は画材店で販売されています。
 
・ 面相筆、平筆、ペン型のカッター
いずれも画材店、ホームセンターで購入できます。
修繕方法
 8年間、毎朝愛用していたお気に入りの「史晃所有 作者不明 虫明焼? 朝食焙じ茶用湯呑」が、こんな姿になってしまいました。芸術的な割れ方に絶句・・・ 「割った人のセンスは凄い」の一言です!
工程1
 始めに、破片を付けていく順番を確認してください。今回の場合、破片は6個に分かれていますが、1つ間違っただけで後の破片が入らなくなります。
 接着はすべて漆を使って行います。薄め液は使わず、はみ出して盛り上がる位に漆を塗ってください。はみ出した漆は後で落とせます。たっぷり塗らないと水漏を起こします。漆にこだわらないのなら、瞬間接着剤の方が作業が早いと思います。
 どうしても破片が平たく付かずデコボコになる事がありますが、これはもともと器がもっていた歪です。この歪の力が割れたことにより解きほぐれ、破片がもとの形とは微妙にずれてしまいます。
このまま、完全に乾くまで3日間ほど乾燥させます。
工程2
 破片のない部分に水中ボンドを付けていきます。後で削っていくのですが、微妙なラインや湾曲を再現するために、多少厚めに付けた方がいいと思います。
 水中ボンドが硬化するまで半日〜1日乾かして下さい。
工程3
 一番、時間を要する工程です。
 まず、ペン型のカッターであら削りをし、大まかな形を整えてから耐水サンドペーパーに水を含ませて削っていきます。もし、削りすぎた場合はもう一度水中ボンドを付け、削り直して下さい。納得できる仕上がりになるまで、この工程を繰り返します。この時、工程1ではみ出した漆も一緒に削り落としますが、あまりこすると器に傷が付いてしまうので気になる方は慎重に行って下さい。
 削り終わったら、つかる位の水に2日〜3日付けて水中ボンドのあく抜きをして下さい。
 毎日、水替えをして下さい。
工程4
 仕上げに入ります。
 まず、接着したラインと水中ボンドの所に漆を塗り、漆が半乾きになった所に金を付けていきます。この時の漆は薄め液である程度薄めて使いますが、薄めすぎると金の乗りが悪いですし、薄めが足りないと仕上がりが盛り上がったようになってしまいます。
金を付けるときは、乾いた平筆の先に金粉をたっぷり付け、漆面に優しくたたき付けるように付けていきます。
 1日〜2日乾かせた後、余分な金が付いているので平筆で掃くようにして、金を回収します。スポンジと洗剤できれいに洗えば完成です。
取り扱い
 漆器を扱う程度でいいと思います。あまり神経質に使わなくても大丈夫ですが、ナイロンたわしで強く擦ったり、漆、金の性質上、漂白剤や電子レンジによる加熱は避けてください。
 使っている内にどうしても金が剥げ、漆の色がでてきますので、また塗り直して下さい。
最後に
  出来るだけ解りやすく、詳細に書いたつもりですが、私は文章が苦手なため、上手く表現できていない所もあると思います、ご勘弁ください。
 先人の方が残された文献なども参考に、自分流に出来るだけ簡単な作業になるようにアレンジしています。決して私の方法がベストではありません。
 本当の金繕いは、本漆、ご飯粒、砥の粉、木材などの天然素材を使い、3〜4ヶ月かけて直して行くそうです。昨今、何に措いても低価格、使い捨ての時代ですが、器に限らず何事においても、昔の日本人の「物を大切にする心」を見習いたいものですね。
 
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